英国の路線バス問題をネットで検索していると、ウィキペディアに「ロンドンバス」の説明がありました。ここを読んでいると、まさに京都市バスの現状と似たような問題が既に起きています。
毎朝の蘆山寺通での立命館大学行きの路線バス大渋滞と同じような事は、ロンドン中心部のオックスフォード通りでも起きていたのです。その原因は、次のように書かれています。
「もともと市内の渋滞は道路工事や運転者のマナーの影響もあるが、バスの過剰なダイヤ編成という一面もある。最悪の場合、トラファルガー・スクエア - ヘイ・マーケット - ピカデリー・サーカスまでバスのみで数十台と並ぶ異常な渋滞がしばしば発生する。これはボリス・ジョンソン市長が連接バスを退役させ、輸送力を補うための増便をした結果、招いた事象であるといえよう」
まさしく、これまでの京都市長がしてきた事とまったく同じです。路線バスの過剰運行が原因なのです。専門家でなくても、一般人でも分かります。
道路には、それぞれ信号があり、一定時間の交通量は決まっているのです。その限界を超えると渋滞になります。高速道路ならば、信号の代わりに料金所を先頭に渋滞するわけです。それを緩和するために料金後払いシステムのETCができたのです。米国では日本よりさらに進んだシステムがあります。課金ゲートはなく、センサーで通過した車両の専用カードを認識し、所持していなければ後日郵送で請求書が届きます。十年以上前に米国をレンタカーで走っていた時に有料道路とは知らずに通過してしまい、後日、日本でレンタカー代と一緒に請求されました。彼らはクルマを写真撮影しナンバーから持ち主を割り出しています。それは高速道路だけでなく、一般道のほとんどすべての信号機にカメラが付いています。信号無視や一旦停止などの交通違反はオートマチックにチェックしています。日本の警察のように警察官が個別に検挙する事はありません。逆にカメラで撮影されるので、交通違反するドライバーも劇的に減少します。日本のように信号無視が当然の社会とは違います。
松井市長が発表した、オーバーツーリズム対策として観光客による市バスの混雑解消のために観光地を結ぶ「観光特急バス」。市民と観光客の利用を分ける目的で運賃は500円にしていますが、これも既に結果はロンドンバスに見えています。ロンドンバスには市内と空港を結ぶ「エクスプレス・ルート」と呼ばれる急行で運行する路線が3路線あります。空港まで行きますから利用者は多いようですが、空港に到達する時間は普通路線バスと比べ早くなる一方、特別な道路を走るわけではないので、市街地の渋滞時や追い抜きができない区間での到達時間は普通路線とさほど変わらりません。つまり、京都市内の混み合う道路を走る運賃が高い特急路線バスに果たしてどれだけの観光客が乗るかどうか、運賃を高くするだけで市民と観光客の利用をすみ分けが本当にできるかどうかです。実は普通運賃も500円以上にしないと運転手の給料は増えません。燃料が高い日本では、現在の普通運賃では赤字なのです。
そして、日本でもよくいわれています連節バスや電気バスについても書かれています。あの有名なロンドンの2階建て路線バスのルートマスター、実際にイギリスで見ましたが、混雑路線では輸送力が足りず、増発すれば慢性的な交通渋滞が起き、バス一台の乗車定員を増やすために市長が「連接バス」を導入しました。ロンドンバスのベンディバス(連節バス)が運用されましたが、次のような諸問題があり元通りの2階建てバスでの運行に変更されたのです。
・道路を改良しないままの狭い路上や交差点での右左折時に歩行者と接触事故が多発。
・車体の火災事故が一定期間で連続して発生し、エンジンの欠陥が発覚。
・乗降時に全てのドアを開けることでキセル乗車が多発。
連節バスと普通バスの混在ルートでは渋滞解消はできず、バスの便数を増やすことにより混雑が増え、ロンドンでは連節バスは姿を消したという事です。
京都市交通局が電気バスや連節バスを導入しない、できない理由には予算(カネ)がないと思われがちですが、ロンドンバスの現状を分析すれば、どうなるかがわかります。対岸の火事です。電気バスについては、リチウムイオンバッテリーの自然発火事故が多発しているようです。ロシアなど気温が低い地域ではバッテリーが高温になりにくいですが、日本のような気温ではロンドンと同じような事が起きるのは推して知るべしです。
さらに、こんな事も書かれています。ロンドン市内を走るバス路線のほとんどは運行距離が長めに設定されており、長い路線では片道16㎞を超える路線が多数存在するが、これは地下鉄などの鉄道運賃より安価なバス運賃を選ぶ旅客が多いこと、地下鉄トラブルの際にロンドン郊外までの輸送手段をバスで確保していることに起因する。そのために地下鉄線と並行して運行しているバス路線が多いとあります。ロンドンのチューブと呼ばれる地下鉄網と京都市営地下鉄では規模が全然違います。では、京都市バスの路線とロンドンバスの違う点は、市バスは短い路線が多数存在することです。それにより、コストがかかるのです。つまり、運転手と車両が多く必要になります。赤字の原因であり、運転手不足を引き起こすのです。
最後に管理の受委託という市バス運行委託契約方式での路線バス運営です。ロンドンバスの運行会社は、旅客輸送の大手企業から地場企業の運行も多数あり、決定的に日本の路線バス運営方式と違う点は、管理の受委託形式ではない点です。車両のデザイン(赤色)だけは統一していますが、各社がバス車両を保有しています。京都市交通局の市バス車両での運行が必須条件ではないのです。つまり、運転手の人材派遣ではありません。ロンドンバスは10社程ありますが、すべて各社が400台から1000台の車両を保有しています。もちろん、運賃は各社の売上です。市バスのように運賃売上はすべて京都市交通局のものではありません。
なぜ、英国の路線バスは2階建てなのか?それは観光客を呼び寄せるためではなく、1台あたりの輸送力を上げるためです。輸送力を上げれば運転手不足を補えるわけです。その好例が電車です。数両の車両をワンマンで運転しています。京都市交通局は日本の狭い路線バスで観光都市の輸送力を上げようとするから、運転手と車両がたくさん必要になりコストがかかるのです。京都市は地下鉄環状線も新たに掘らない、LRT(路面電車)もつくらないでは、いつまで経っても京都市内のオーバーツーリズムや観光公害を解決できません。あくまでも路線バスは地下鉄の補完交通手段です。路線バスを増やせば渋滞や事故が起きます。しかし地下鉄を増やしても渋滞は発生しません。なぜなら地上ではなく地下を走っているからです。
イギリスの人口は日本の約半分です。なぜ、こんなにも違いがあるのでしょうか?日本と同じように王室があり島国です。面積もそんなに違いありません。政治も議会制立憲君主制です。その答えは本物と偽物の違いです。日本は資本主義という仮面を被った社会主義国家だからです。決して民主主義国家ではありません。官僚によって統制された国なのです。つまり、御上が規制する社会です。日本は過去の歴史の中で一度も市民革命がなかった国です。法律や憲法は欧米のコピー、いちから自分達で考えたものはありません。民主主義とは「民が主」なのです。政治家や官僚、大企業が中心になって好き放題できる社会を民主主義社会とは決して言いません。だから観光公害を克服できず、路線バス公害が起きているのです。