前回に引き続き、路線バスの現状と将来について書かれている資料がネットにたくさんありますので、目についたものを分析したいと思います。長野県の長電バス株式会社 湯本氏の平成27年2月23日の資料です。題名は「バス会社はどのようにして生き残っているか」というものです。補助金の仕組みについてもわかりやすく書かれています。
京都市の一般会計から京都市交通局に「敬老乗車証負担金」として45億円以上もの税金が毎年投入されています。これは全国の自治体では「敬老パス」と呼ばれるものです。これが、いわゆる路線バス会社への補助金(負担金は売上として計上)なのです。欧米にも、シニアパスやシニア料金と呼ばれるものがあります。米国やカナダの場合、年間と月間があり、年間で15000円ぐらい、月間でも4000円近くします。金額的には日本と変わりません。
路線バス会社への補助金の仕組みについて説明されている内容は以下の通りです。
国・県補助金「地域間幹線系統確保維持費補助」の場合
<交付要件>
①赤字路線であり、複数の市町村をまたぐ系統
②1日の運行回数が3回以上の系統
③1日の輸送人員が15人~150人の系統
※国・県補助金は、赤字の100%が交付されるわけではない。1キロあたりの利用人員が5人を下回った場合は、一定の計算により補助金が減額される。補助要件に添えなくなったら、路線を休廃止すると書かれています。ただし、これは民間バス会社の場合だけで、京都市交通局のような公営企業(役所)は、路線を休廃止するどころか、採算度外視で路線を復活したりします。
これは地域間の幹線系統確保維持費と呼ばれる補助金です。つまり、赤字路線は補助金がもらえるということです。なぜ、京都市バスが京都市内を網の目のように細かく路線を作って走らせているのか、これは補助金が欲しいからです。前回のブログでも書いていますが、固定費(コスト)は路線を休廃止しても、運転手の数が減らない限り変わらないのです。補助金をもらうために臨時バスを走らせていると言っても過言ではありません。そして、一方で運行委託によって運転手の数を減らし、人件費を抑制しようとした結果、京都市バスの運行委託問題が発生したのです。
さらに、資料にはバス運転手の不足についても具体的に書かれています。
①早朝からの勤務、深夜までの勤務、さらに出退勤時間が毎日異なる不規則勤務
②運転が業務のため交通事故の心配が常にある ※人身傷害や死亡事故を起こせば一生つきまとう。保険金だけでは解決されない
③高額な運転免許取得費用40万円~50万円 ※二十年前は30万円
④それでいて、給料は他産業より低い(平均年収で全産業平均の約90%)
以上の結果、バス運転手のなり手がいないという事です。しかし、これはバス運転手だけでなく、トラックの運転手もタクシー運転手にも共通する事です。運転する仕事には事故がつきまのです。いくら安全運転をしていても、人やクルマが突然出てきます。
上記の「乗りものニュース」の記事にも書かれていますが、なぜ日本では主に民間企業が路線バス事業を担っているのでしょうか。その答えをひと言でいえば、かつては儲かったからです。あの故田中角栄元首相が長らくバス会社の経営者でもあったことも書かれています。それほど儲かる商売だったわけです。そこから抜けきれない昭和時代のままの公営企業(役所)が京都市交通局なのです。この記事に書かれていることが現在の京都市バスの経営スタイルです。
京都市交通局は、公営企業(役所)であるために運転手は公務員扱いです。つまり、身分が保証されているのです。そのために民間バス会社では考えられない年収700万円台の運転手がいるのです。民間バス会社では、運転手の年収は400万円台です。運転手に相場の1.5倍もの給料を支払うとすぐに会社は潰れます。公営企業の場合は税金で補填されるので、毎年大赤字でも給料も上昇し賞与ももらえます。役人も成果主義と言いつつも、コロナ禍でも、いつも通りに夏のボーナスがもらえます。まさに資本主義ではなく、社会主義です。その原資は国民から集められた税金です。国民が金融機関などに預けたお金です。
本当に日本は公務員天国です。いまだにテレビや新聞でも「安定した公務員の身分」という言葉が流れます。これを見聞きすると非常に違和感を覚えます。改めて日本が社会主義国家であることを確信します。決して民主主義国家ではありません。なぜなら、特定の道路に市営バスの過剰運行を平気で許すような自治体だからです。沿線住民(市民)の事より、観光と大学を優先する京都市、一刻も早く財政破綻してもらいたいです。そして、ゼロから出発するべきです。市民からの信頼を取り戻すチャンスになります。