平成30年度の京都市交通局の「京都市交通事業白書」には、次のように説明されています。
市バス事業の経常損益
経常収入217億円
内訳)運送収益204億円
その他13億円
経常支出198億円
内訳)人件費77億円
経費(管理の受委託、燃料費、修繕費)102億円
減価償却費等17億円
その他2億円
経常黒字19億円
過去の旅客収入の推移から見ると、おそらく運送収入(運賃売上)が185億円ぐらいを切ると実質赤字経営になるということです。間違いなく、コロナ禍で令和2年は大赤字です。令和3年も続きます。
そして、問題の地下鉄事業です。支払利息でなんと!54億円、減価償却費等130億円、人件費54億円、経費(動力費、修繕費等)71億円です。人件費と経費を足すと固定費が125億円、一方の市バス事業では179億円です。地下鉄事業の運送収入は258億円です。しかし、内訳には一般会計補助金(税金補填)が18億円入って、経常黒字25億円です。本当の黒字は7億円です。市バス事業にも大きな構造的な問題があります。それは固定比率が90%以上なのです。これはコロナ禍などの不測の事態が起きて旅客収入が激減すると莫大な赤字になるのです。
地下鉄事業は大きな荷物を背負っています。負債として3529億円の企業債等残高(市民への借金)に加え、314 億円の累積資金不足があるようです。合計した有利子負債は、なんと!3843億円と全国の公営地下鉄の中でも一番厳しい経営状況のようです。京都市の財政にとって、莫大な借金です。さらに車両更新等に740億 円もの多額費用が継続的にあるようです。これは京都市の都市計画投資の大失策です。このままの状態だと、デフォルト(債務不履行)の懸念が生じると思います。
地下鉄事業の職員数627人、市バス事業の職員数927人です。一人当たりの人件費は両方とも850万円前後です。人件費が高過ぎます。平成29年度の「京都市交通事業白書」に職員数の推移があり、市バス事業の損益分岐点である旅客収入が185億円ぐらいの時の職員数は、おおよそ800人前後であることがわかります。つまり、現在約127人も多いのです。それでも、バス運転手を新たに募集しています。そんなにもバス運転手の出入りが激しいのでしょうか。
今後、数年はコロナ禍で間違いなく観光客は激減状態のままです。旅客収入は低迷します。もちろん、大学生などの通学もです。ということは、運転手含め職員数を増やすと赤字幅が大きくなります。規模を拡大するのではなく縮小して、市バスの赤字路線の廃止、便数も減らして系統整理する必要があります。そうすれば、運転手も増やす必要がありません。旅客収入に見合った経営計画を考えるべきです。拡大路線は失敗します。京都は大都市ではありません。日本は高度成長期ではありません。
京都市交通局の恣意的な「攻めの経営」は、これから本番の少子高齢化、多死社会の人口減少経済を考えると、誤った経営スローガンになります。京都市への観光客の増加、京都市の人口増が重なり合わない限り、京都市交通事業として拡大路線に進むと間違いなく大失敗します。既に地下鉄の拡張自体が首を絞めているのです。政府のリニア中央新幹線や北陸新幹線と同じで費用対効果が相当低いです。京都市で言えば、京北町を右京区にしてニュータウン化するために環境破壊のトンネル工事をいくつもしたことです。どちらも、需要と供給のバランスがありません。税金の無駄遣いです。ここに、なんと立命館大学もからんでいるのです。
何事も大風呂敷を広げてはいけません。結果的に市民が被害を受け、そのツケが将来にまわります。これからの日本に必要な事は、身の丈に合った政策なのです。いつまでも、米国に次ぐ経済国家ではありません。高度成長期など二度とありません。他国に抜かれても、市民が幸せな国を目指すべきなのです。